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最近よく耳にする「脱法ハウス」の定義とは?

人気を集める建物のシェアハウス活用。しかし最近になり違法性を含むとされる「脱法ハウス」の存在が報道されるようになりました。法に触れる可能性のあるシェアハウスとは何なのでしょうか?ここでは具体的な定義を探っていきます。

「脱法ハウス」(≠ 違法貸しルーム)とは何か?

2013年の半ば頃からよく聞くようになった言葉、「脱法ハウス」、「違法貸しルーム」。これらは、具体的にどういったものを指すのでしょうか? 「脱法ハウス」は、実は、2013年5月23日から始まった毎日新聞の一連の報道記事で用いられている言葉です。他のテレビや新聞などの報道メディアは「違法シェアハウス」「違法ハウス」、あるいは後述する「違法貸しルーム」などを用いています。

毎日新聞記事 “脱法ハウス:都内で増加 消防法違反で危険

2013年5月23日付記事 (※該当記事は2013年11月4日現在、閲覧可能)

同新聞紙上では脱法ハウスの定義は明確ではありませんが、オフィスビル、雑居ビル、戸建住宅をネットカフェ業者が改修し提供していたケースについて記述された記事からは、下記のような共通した論点を読み取ることができます。

  • 「24時間利用可能なレンタルオフィス」としているが、入居者の多くが住民登録するなど居住実態がある
  • 「シェアハウス」として宣伝・募集している
  • 入居者との契約は、業者側の判断で即時解約可能な利用権契約としている
  • オフィスビルや住宅を改修。非常に狭く、有効な窓がない数多くの個室を提供している
  • 住人同士の会話はほとんどなく、施設内にどんな人が住んでいるか分からない

「違法」でなく「脱法」という文言を使っているのは、形式的な適法性を業者が主張しているものの、実態として下記のような違法性があるという含みからです。

※参照元記事。現在はWEB上で閲覧不能な記事が多い

  • http://mainichi.jp/graph/2013/05/23/20130523k0000m040105000c/001.html
  • http://mainichi.jp/select/news/20130523k0000m040106000c.html
  • http://mainichi.jp/select/news/20130525k0000m040091000c.html
  • http://mainichi.jp/select/news/20130530ddm041040168000c.html

例:戸建住宅を改修してレンタルオフィスとして提供しようとしたケース

業者の主張1

建築基準法上・消防法上における適法性

24時間利用可能なレンタルオフィス(事務所利用)なので、共同住宅・寄宿舎としての建築用途の変更、消防設備の設置は不要。専有部(個室)も事務所の居室としての要件を満たすのみで良い。

報道等における指摘1

実態として考えられる違法性

多数の居住実態があるため、共同住宅などの居室として扱わけなればならないのではないか。

業者の主張2

借地借家法上の適法性

24時間利用可能なレンタルオフィスなので、借地借家法の適用される建物賃貸借契約ではなく、施設の利用権契約を行うことができる。

報道等における指摘2

実態として考えられる違法性

多数の居住実態があり、借地借家法に則った契約をするべきではないか。

例:分譲マンションの1室を改修してカプセル状の部屋を提供しようとしたケース

業者の主張3

建築基準法上・消防法上の適法性

「居室ではなくベッドの一種」とする鍵のかかる寝台を上下に並べて置き、各入居者の居住スペースとする。寝台はあくまで家具であるため、寝台によってカプセル状に仕切られた部屋が居室としての要件を満たす必要がない。

報道等における指摘3

実態としての違法性

実態としては、間仕切りされた居室と判断するべきではないか。

※参照元記事。現在はWEB上で閲覧不能な記事が多い

  • http://mainichi.jp/select/news/20130713k0000e040272000c.html
  • http://mainichi.jp/select/news/m20130711k0000m040130000c.html

「脱法ハウス」報道の主眼

このように、毎日新聞による一連の「脱法ハウス」キャンペーンを皮切りに多数の報道メディアなどで広く取り上げられてきたのは、ところどころに曖昧な箇所は見られるものの、

  1. 既存の建物を改修するなどして極端に狭い部屋を多数設け、
  2. 安価な賃料を主要な訴求点として実態として居住用に提供する施設に関する、
  3. 入居者や周辺住民の安全性、居住性、居住の権利などの問題

を主眼とする点では、一貫した内容であったと言えます。

また、業者と管理組合が争う分譲マンションの事例を紹介した毎日新聞の記事には、議事録に記されたマンション住民の次のような発言が引用されています。

『3人程度のシェアなら時代の流れで分かる気がするが、12人は無理がある』

業者と争うマンション住民は、常識的なシェア活用の範疇にまでなら必ずしも反対していないことが読み取れます。

脱法ハウス ≠ 空き家のシェア活用

さて、一連の脱法ハウス報道は危険性の高い事例を広く知らせ、社会に現実的な行動を促して、不幸な災害を未然に防ぐことになりました。

ところが、これらの報道などに応える形で国土交通省が2013年9月6日に発表した「違法貸しルームに関する通知」(※参考記事)では、いわゆる「脱法ハウス」として社会問題化した極端な事例にとどまらない、幅広い事例が規制対象となる内容となっています。

報道等の成り行きを見れば、国土交通省のこうした対応も一面でやむを得ないものであったことは否定できません。しかし、空き家のシェア活用というテーマ全体を見た場合には、これら一連の法運用の成り行きが、芽生えつつあった新たな住まい方の需給サイクルに実際の問題以上の萎縮効果を与え、その可能性を将来に渡って摘んでしまいかねない副作用を生んでいることは広く認識される必要があります。

空き家のシェア活用は、今後ますます大きな社会的課題となる空き家の増加、住宅地の過疎化、シニアの単身世帯に関わる諸課題、単身者の豊かな住環境整備などの改善に大いに役立つ取り組みです。また上述のように、報道媒体などで問題視された社会問題は、必ずしも空き家のシェア活用全体に関するものではなく、あくまで特定の好ましくない住環境を生んだ事例に対するものです。

一部の極端な事例に目を奪われて過剰な規制を敷くのではなく、むしろ社会として適切な形で上手に活用する方向で制度の整備を進めることが望ましいのではないでしょうか。

またその際、中長期的な制度の整備だけでなく、これまでに常識的な範疇で行なわれてきた多くの空き家活用の事例と、そこで暮らす人々の安寧な生活が理不尽に奪われることのないよう、短期的な法運用のあり方にも充分な配慮が行われるべきでしょう。

Text by 北川大祐

株式会社ひつじインキュベーション・スクエア代表

  • 2005年 株式会社マサキカンパニー入社 ひつじ不動産事業立上げ
  • 2007年 株式会社ひつじインキュベーション・スクエア設立
  • 2008年 統計データ「シェア住居白書2008」発表
  • 2010年 書籍「東京シェア生活(2010)」監修
  • 2013年 統計データ「100,000 THANKS REPORT(2013)」発表

リクルート住宅総研「愛ある賃貸住宅を求めて NYC,London,Paris&TOKYO賃貸住宅生活実態調査」寄稿(2010) 「シェア住宅管理士講座(2010~)」開催 京都府宅地建物取引業協会第2支部の研修会講師(2010) 経済産業省中部経済産業局研究会講師(2011) 全日本不動産協会賃貸管理専門コース研修(2012) 三菱総合研究所主催mifセミナー講師(2012) 日本小売業協会生活者委員会講師(2013) 住宅産業フォーラム21平成25年度第2回フォーラム講師(2013) その他不動産業界等における講演多数

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