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9月6日の国土交通省通知に関する解説と論点整理

脱法ハウス・違法シェアハウスなどの各種報道を受けて国土交通省から出された「違法貸しルーム対策に関する通知」については、専門家の間でも議論が分かれています。実際の通知文書に含まれているポイントと、その論点について見てみましょう。

参考 違法貸しルーム対策に関する通知について(国土交通省)

はじめに

いわゆる、脱法ハウスの取り締まりのため、9月6日付で国交省から出された「通知」は、一部の悪質な事業者による脱法ハウスだけでなく、既存のシェアハウスの多くについても、厳しい規制を掛ける内容となっています。 本「解説と論点整理」は、この国交省通知の内容をできるだけ多くの方に知っていただき、シェアハウスの健全な発展を促進するための議論を深めることを目的に作成したものです。

通知1.多人数の居住実態がありながら防火関係規定等の建築基準法違反の疑いのある建築物に関する対策の一層の推進について(技術的助言)

[各都道府県建築行政主務部長宛 住宅局建築指導課長]

解説:

  • 事業者が入居者の募集を行い、自ら管理等する建築物の全部または一部に複数の者を居住させる「貸しルーム」は建築基準法における「寄宿舎」に該当する
  • この考え方は「貸しルーム」の従前の用途や改修の有無にかかわらず、同様
  • 事業者と居住者の間の契約上の使用目的が倉庫など居住以外のものとなっている場合も同様
  • 「貸しルーム」の中の、特定の居住者が就寝する等居住する一定のプライバシーが確保された独立して区画された部分は、それぞれ建築基準法における一の「居室」に該当し、居室の採光、関築物の間仕切壁などの規定を満たす必要がある
  • 建築基準法違反が判明した貸しルームに対する是正指導においては、違反部分が是正された後に、改めて改修が行われて同様の違反形態とならないよう、確実な是正指導を講じること
  • 所有者、事業者、設計者等の関係者からの相談には、必要な調査を行った上で、違反の有無に関わる情報を適宜提供する

田村による見解1:

  • 事業者が入居者の募集を行い、自ら管理等する建築物の全部または一部に複数の者を居住させる「貸しルーム」は建築基準法における「寄宿舎」に該当するとしたが、事業者の関与の仕方により、建築物の用途の判断が異なるというのは、きわめて異例の考え方と言える
  • また、上記の考え方は、寄宿舎の定義外となる募集- 管理形態が偽装されるなど、悪質な業者ほど脱法化していく恐れがある
  • 「貸しルーム」の従前の用途や改修の有無にかかわらず、上記と同様の判断を行うとしているのは、特に、改修のない戸建て住宅のシェアハウス利用などについて、寄宿舎への用途変更を義務付けることが妥当かどうかという問題がある
  • 事業者と居住者の間の契約上の使用目的が倉庫など居住以外のものとなっている場合も同様としているのは、当然の措置と考えられる
  • 一の居室の考え方については、これは妥当な規制と考えられる。ただし、カーテンなど稼働間仕切りで仕切ったケースなど、グレー部分は残る

通知2.マンションにおける「違法貸しルーム」への対応について(依頼)

[一般社団法人マンション管理業協会、公益財団法人マンション管理センター宛 不動産業課長、建築指導課長、市街地建築課長]

解説:

  • <違法貸しルームへの対応について~居住者- 区分所有者- 管理組合のみなさまへ~>の書面を会員マンション等への配布を依頼
  • マンションの一住戸を簡単な壁で小さな空間などに区切って多人数に貸し出す違法貸しルームは、火災など安全面で大きな問題のある事例が多く見受けられる
  • 建築基準法等の疑いのある物件についての情報を国土交通省または特定行政庁に提供していただきたい
  • 専有部分の改修を行おうとするものは、関係法令に違反しないよう留意していただきたい
  • 違法貸しルームへの改修の疑いのある物件を把握した場合などは管理会社などと相談の上、特定行政庁まで相談していただきたい
  • 建築基準法違反である旨の情報が特定行政庁から提供された場合には、専有部分の改修を不承認として差支えない
  • マンション管理規約に、専有部分の改修についての承認規定を定めることや、承認規定についての法令違反を不承認事由に定めることが、今後のトラブル防止に役立つ

田村による見解2:

  • 全般的にほぼ妥当なものと考えられるが、「建築基準法違反である旨の情報が特定行政庁から提供された場合には、専有部分の改修を不承認として差支えない」としているのは、同じ趣旨の規定が管理規約に定められている場合には妥当であるが、定められていない場合には、法的な争点となるケースも考えられる
  • 関連事例:東京都港区麻布十番の分譲マンション7階フロア(83㎡)をシェアハウスに改造して貸し出すのは「住人の共同の利益に反する」として、管理組合がフロア所有者を相手取り使用禁止を求めた仮処分申請で、東京地裁は10月24日、申し立てを却下する決定をした。地裁は「トラブルが著しく増加するとは認め難い」とし、シェアハウス転用を禁止した管理規約の変更は無効と判断した。組合側は即時抗告する方針

通知3. 違法貸しルーム対策に関する通知について(プレスリリース)

[住宅局建築指導課、市街地建築課、土地- 建設産業局不動産業課]

解説:

  • 違法貸しルーム対策として、全国の特定行政庁宛に上記1の通知を行った
  • マンション関係団体に、マンションの居住者、区分所有者、管理組合の方向けの「違法貸しルーム」への対応に係る周知文配布依頼の通知(上記2)を行った
  • 上記1の技術的助言のうちの用途判断と一の居室に係る判断については、従来からの建築基準法の考え方を改めて示したものであり、法の解釈に新たな変更を加えるものではない

田村による見解3:

  • 「技術的助言」のうちの用途判断と一の居室に係る判断については、従来からの建築基準法の考え方を改めて示したものであり、法の解釈に新たな変更を加えるものではないとしているが、少なくともシェアハウスの建築基準法上の用途は、各特定行政庁により判断が分かれていた経緯があり問題が残る

国交省通知についての論点整理

  1. シェアハウスの建築基準法上の用途を、従来から「寄宿舎」であったとする国交省見解の妥当性
  2. 特定行政庁が寄宿舎以外の用途でシェアハウスに関わる用途判断を行ってきた物件の取り扱い
  3. 今回の国交省の通知を受けての特定行政庁の対応(地域の実情に応じた的確な対応をすることができるのか?(東京都建築安全条例上、寄宿舎の建築が認められない敷地に建つシェアハウスの取扱い、地方都市での空き家問題の解決策としてのシェアハウスの活用など)
  4. 事業者の募集- 管理への関与の有無により、検知器基準法上の用途を規定することの妥当性
  5. 事業者関与を偽装する等の方法による脱法行為への対応策
  6. 改修のないシェアハウス利用の戸建て住宅を寄宿舎に用途変更することを義務付けることが妥当性
  7. カーテンなど稼働間仕切りで仕切ったケースなど、一の居室の考え方のグレー部分の取り扱い
  8. 寄宿舎にしたくても法的に不可能なシェアハウスなどの今後の取り扱い(現在の居住者は借地借家法のため、立退きは強制できず、空き室が出ても宅建業者を通じて募集活動もできず、賃貸を継続することも売却することもできない状態になる≒財産権の侵害?)
  9. 用途判断が明確でなかった既に存在するシェアハウスの用途を寄宿舎と断定し、それに適合しない建築物は違法建築物としたことと、「法の不遡及」の原則の関係
  10. 一部の悪質な業者の取り締まりを、建築基準法をもとに行ったことの妥当性(業者の取り締まりは本来は業法で行うべきでは?)
  11. 地域の実情を踏まえた安全で健全なシェアハウス育成のための法規制のあり方
  12. 望ましい法規制のあり方と、今回の通知の双方をにらんだときの現実的な対応策

まとめ

生活や空間の一部を他人と分かち合う「シェアハウス」は、単に住居費の節減を目的としたものではなく、わが国の家族構成の変化や家族観の変容を背景とした新たなライフスタイルの現れであり、空き家活用や地域の活性化などの面でも大いに期待されています。

こうしたシェアハウスの可能性を狭めることなく、その安全性と健全性を高めるような社会的なルールのあり方について、ぜひ、皆さんと一緒に議論を深めていきたいと思います。

Text by 田村誠邦

株式会社アークブレイン代表取締役/明治大学理工学部特任教授。
博士(工学)・一級建築士・不動産鑑定士。

  • 1977年 東京大学工学部建築学科卒業 同年、三井建設株式会社入社
  • 1986年 株式会社シグマ開発計画研究所入社
  • 1997年 株式会社アークブレイン設立 代表取締役 現在に至る
  • 2011年 明治大学理工学部客員教授
  • 2013年 明治大学理工学部特任教授
  • マンション建替え・建築再生等、各種建築プロジェクトのコンサルティング、コーディネイト
  • 2008年 「求道会館・求道学舎の保存と再生事業」で日本建築学会賞(業績)
  • 2010年 「ストック時代における居住者参加型集合住宅供給の実現プロセスに関する研究」で日本建築学会賞(論文)

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